箕面市 歯医者 平野歯科クリニック
院長 平野 琢起
皆さんこんにちは!
医療法人平野歯科クリニック院長の平野です。
今回は歯周病とアルツハイマー病の関係性についてお話します。
アルツハイマー病は認知症を引き起こす原因疾患の一つです。
アルツハイマー病には根本的な治療が開発されておらず、留意すべき疾患の一つと言えます。
そんなアルツハイマー病ですが、実は歯周病が引き起こす場合もあるのです。
□歯周病とは
そもそも歯周病と言われても、ピンとこない、もしくはなんとなくしか理解されていない方も少なくないと思われます。歯周病について詳しくご説明させていただきます。
歯周病はその名の通り歯の周り、つまり歯や歯の周辺組織(歯周組織)に細菌が繁殖して起こる病気です。
この細菌は歯周病原菌と呼ばれ、歯周組織に炎症を起こし、口腔内に様々な悪影響を及ぼします。歯周病は2001年にギネス認定されており、全世界で最も感染者数の多い病気となっています。また、軽度の場合は自覚症状が殆どないため、自身が罹患していることに気づくことが難しい病気でもあります。
歯周病の原因の多くは、歯磨きが十分できておらず口腔内に溜まった食べかすを細菌がエサにして繁殖することで起きています。繁殖した細菌はプラークと言われる歯垢を作り出し、これは細菌の巣窟となります。プラーク内の細菌は毒素を生み出し、歯肉に炎症を引き起こしてしいます。この炎症が続くと段階によって様々な症状があらわれます。
まず、軽度の場合、歯ぐきが赤く腫れ上がったり、歯磨きや硬いものを食べた時に出血が起こったりします。痛みは殆どないため、自覚しにくい段階です。
次に中度の場合、歯を支えている骨が溶け始め、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)が広がります。口臭や歯が浮くような感覚がありますが、痛みを感じることが少なく、この段階でも気づきにくくなっています。
最後に重度ですが、歯の根っこ(歯根)を支える骨が殆ど溶け出し、歯のグラつきが起こってきてしまいます。
ここまで来てしまうと歯を残すことが難しくなってしまい、抜歯になるケースが少なくありません。
このように、歯周病は自覚症状が殆どないまま進行し、歯を失う原因を引き起こします。
□アルツハイマー病とは
まずはアルツハイマー病についてお話をしていきたいと思います。
アルツハイマー病とは、認知症の原因疾患の1つと言われています。別名アルツハイマー認知症と呼ばれることもあり、現在このアルツハイマー病を発症している人は、全世界で約4,400万人、そして日本国内にもおいて460万人の方々が発症していると言われています。
アルツハイマー病=認知症と認識されている方がいますが、その認識は誤りです。あくまでも認知症は様々な病気によって引き起こされる症状のことです。ここで認知症とアルツハイマー病の違いについて簡単に触れておきます。
まず何度もお伝えをしておりますが、アルツハイマー病は認知症の原因疾患の1つです。そして、認知症は様々な病気によって引き起こされる症状です。
男女比ですが、アルツハイマー病は女性の発症率が高いと言われています。一方で認知症はおおむね男性の発症率が高いと言われています。
主な症状ですが、アルツハイマー病では記憶障害が起きやすくなり、認知症では物忘れが激しくなると言われています。
進行速度については、アルツハイマー病では「非常にゆるやか」とされており、認知症では「おおむねゆるやか」となっております。
認知症の全体の6割がこのアルツハイマー病の症状と言われています。
□アルツハイマー病の症状について
今回のパートではアルツハイマーの症状を初期・中期・後期と分けて解説をしていきたいと思います。
アルツハイマー病の初期段階では脳の記憶を司る海馬の損傷が始まり、下記のような症状が現れます。
・判断力の低下
まずは日々の判断力の低下が始まります。その場面に応じた適切な言葉が以前よりも出にくくなったり、日時や曜日の間違いを起こしやすくなります。また、料理をする方は、以前は頭のなかで段取りを行い、スムーズに料理できていたものが、なかなかスムーズにできなくなるという症状が起きたりします。
・記憶障害
その文字通り、記憶があいまいになる症状のことです。最近起きた出来事を思い出しにくくなったり、物事をぼんやりとしか記憶できなくなるようになってしまいます。
・金銭面でのトラブル
アルツハイマー病を発症すると度々起こるのが、金銭トラブルです。理由は記憶障害につながってきますが、お金の計算がしにくくなるという症状が現れ、結果金銭トラブルにつながるケースも起きます。
・被害妄想
被害妄想も文字通りですが、実際に被害は受けていないのですが、周囲の方から被害を受けたと勝手に妄想してしまうことです。その本人とっては現実で起きたことと認識しているため、周囲の方とトラブルになるケースが見られます。
・実行機能障害
なにか行動する際には、ほとんど人は頭のなかで自分の行動を順序立ててから行動をするかと思いますが、アルツハイマー病になると、この物事を順序立てて考えるということが難しくなります。
次に中期では更に記憶障害が悪化し、下記のような症状が現れやすくなります。
・幻覚や妄想癖を持ってしまう
記憶障害が悪化することにより、周囲の方には見えない幻覚が見えるようになったり、周囲な何も思っていないのに、あることないことを勝手に妄想してしまう癖を持ってしまいます。
・場所の認識ができなくなる
中期では、いよいよ場所の認識ができなくなるという症状が現れやすくなります。いつも通っている場所にもかかわらず、突如行き方がわからなくなったり、その場所にいても、どこにいるのか分からなくなるという症状が見られるようになります。自宅においてもトイレの場所が分からず、失禁してしまうということも起きやすくなります。
・徘徊行動
これは上記の内容にもつながってきますが、場所が特定できず、徘徊行動が見られるようになります。夜遅くにでかけ、居場所が分からなくなってしまうといったことも起きやすくなります。
・失語症
中期になると、記憶障害は更に進み、周囲の友人などの名前などを思い出せなくなります。また、物品の名前も思い出せなくなり、物を取り違えるなどの症状が現れやすくなります。
後期になると更に症状は悪化していきます。
人とコミュニケーションをとることが難しくなり、自分の世話を自分でとることができず、介護に依存してしまうようになります。また、身体能力も低下し、1日のほとんどをベッドの上で過ごすことも多くなります。
□歯周病がアルツハイマー病の原因となる理由
歯周病の方はそうでない方に比べアルツハイマー病になってしまうリスクが高い、と言われています。
2019年、九州大学の研究グループが、歯周病菌を全身に投与されたマウスは、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβ(脳老人斑成分)が10倍近くも増えてしまう、ということを発表しました。
歯周病菌が増えることで、免疫細胞にも炎症が起き、アミロイドβが産出されてしまいます。そして、アミロイドβが脳に取り込まれ、蓄積していくことでアルツハイマー病を発症してしまうリスクが高まります。
また、臨床研究により重度歯周病の罹患と認知機能低下が正相関、つまり歯周病が重度であるほど認知機能の低下を確認したことが報告されています。
こうしたことから、歯周病がアルツハイマー病の原因となると言われています。
□歯周病を予防するためには
アルツハイマー病になるリスクを減らすためにも歯周病を予防する必要があります。また、すでに歯周病の方でも歯周病菌の繁殖を抑えることで進行を遅らせることができます。では、歯周病菌の繁殖を抑えるにはどういうことをすべきでしょうか。
まずは食後の歯磨きです。口腔内の食べかすは歯周病菌のエサとなってしまうので、取り除くことが大切です。フロスや歯間ブラシを使うことで、歯の隙間など歯ブラシでは取り切れない汚れも取れますので必ず行うようにしましょう。
次に間食を減らすことです。口の中に食べ物が入っている時間を増やすと、唾液などの自浄作用により、細菌の繁殖を抑えることができます。
また、定期的に歯医者で診てもらうことも重要です。細菌がプラークを形成すると歯磨きだけでは取り除くことが難しくなり、家庭で使えるケア道具では限界があります。しかし、歯医者であれば、プラークをきれいに除去することができ、普段の口腔ケアが適切であるかもチェックできます。
歯周病を防いで、アルツハイマー病のリスクを減らすためにも、口腔ケアと定期的な歯医者でのメンテナンスを欠かさないようにしましょう。
なにかお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
箕面市 歯医者 平野歯科クリニック
院長 平野 琢起