こんにちは。箕面市平野歯科クリニックの院長、平野琢起です。
今回は、智歯周囲炎(親知らずが原因の歯肉の炎症)について詳しくお話しします。
■智歯周囲炎とは?
智歯周囲炎は、親知らず(第三大臼歯)が生えてくる際に発生する歯肉の炎症を指します。親知らずは、他の歯に比べて非常に後ろに位置しているため、通常のブラッシングでは磨き残しが生じやすく、細菌の繁殖に適した環境が整いやすくなります。この細菌の繁殖が原因で、周囲の歯肉に炎症が起こり、痛みや腫れが発生するのです。
■なぜ智歯周囲炎が起こるのか?
智歯周囲炎の主な原因は以下の通りです。
- 食生活の変化
- 現代の食生活は昔に比べて非常に豊かになり、柔らかい食べ物が多くなっています。例えば、加工食品やファーストフード、スナック菓子などが増え、硬い食べ物を噛む機会が減少しました。その結果、あごの骨が十分に発達せず、親知らずが正しく生えるスペースが不足してしまいます。このような環境では、親知らずが正常な位置に生えにくくなり、結果として炎症が起こりやすくなります。
- 親知らずの位置異常
- あごが小さい場合、親知らずが正しい位置に生えるスペースが不足します。そのため、親知らずは斜めに生えたり、真横に向いたりすることがあり、このような位置異常が発生します。この位置異常により、歯と歯肉の間にプラーク(歯垢)が溜まりやすくなり、さらに歯ブラシも届きにくくなります。その結果、親知らずの周辺が不衛生になり、細菌の繁殖が進み、炎症が発生します。
■智歯周囲炎の症状
智歯周囲炎の初期症状は、奥歯に感じる軽い違和感や痛みです。しかし、放置しておくと症状は悪化し、以下のような症状が現れます。
- 痛みと腫れ: 炎症が進行すると、親知らずの周りの歯肉が赤く腫れ、痛みが強くなります。ひどくなると頬が腫れ、顔の輪郭が変わることもあります。痛みは歯肉だけでなく、顎や耳の周辺にも広がることがあります。
- 口の開けにくさ: 炎症が広がると、口を開けるのが困難になり、食事や会話がしにくくなります。特に大きく口を開ける動作が制限され、食事や歯磨きなどの日常生活に支障をきたすことがあります。
- 発熱: 重症化すると、体全体の免疫反応として発熱することもあります。これは体が感染と戦っているサインであり、全身の倦怠感や寒気を伴うことがあります。
- リンパ節の腫れ: 炎症が進行すると、首や顎の下にあるリンパ節が腫れることがあります。これにより、痛みや圧痛が生じることがあります。
■智歯周囲炎の治療法
智歯周囲炎の治療は、炎症の原因を取り除くことが基本です。以下のような治療法があります。
- 抗菌薬と鎮痛剤の服用
- 抗菌薬で細菌を抑え、鎮痛剤で痛みを和らげます。これにより、一時的に症状が改善します。抗菌薬は、細菌感染の拡大を防ぎ、炎症の原因となる細菌を殺菌します。鎮痛剤は、炎症による痛みを軽減し、日常生活を快適に過ごせるようにします。
- 抜歯
- 親知らずが原因で繰り返し炎症を起こす場合、抜歯が最も効果的な解決策となります。抜歯を行うことで、炎症の再発を防ぐことができます。抜歯は、局所麻酔下で行われることが多く、術後のケアが重要です。術後は、抗菌薬や鎮痛剤の処方を受け、適切な口腔ケアを行うことが大切です。
■親知らずの抜歯を考えている方へ
以下のような症状や悩みがある方は、一度歯科医師に相談することをおすすめします。
- 親知らずを抜いたほうがいいかお悩みの方
- ご自身の親知らずの状態を把握していない方
- 親知らずがまっすぐに生えていない方
- 既に親知らずに違和感や痛みがある方
智歯周囲炎は放置すると非常に厄介な問題に発展する可能性があります。早めの診断と適切な治療が大切です。何か気になる症状がある場合は、ぜひ一度かかりつけの歯科医にご相談ください。
■まとめ
智歯周囲炎の予防としては、日常的な口腔ケアの徹底が重要です。特に親知らず周辺の歯磨きをしっかりと行い、定期的な歯科検診を受けることで、早期発見と早期治療が可能となります。また、親知らずが正常に生えているかどうかを確認するために、歯科医師による検査も有効です。日頃のケアと定期的なチェックで、健康な口腔環境を維持しましょう。