
虫歯をくり返していた19歳の患者様。
その背景には、見た目だけでは気づきにくい「噛み合わせの乱れ」が関係していました。
初診時には、過去の虫歯多発により神経のない歯(失活歯)が複数みられ、未処置の虫歯も多数。前歯が噛み合わず臼歯部に過度な負担がかかっていたことが、歯が壊れやすい原因の一つと考えられました。
このまま虫歯治療のみを行っても再発リスクが高いため、精密検査で咬合状態を詳細に分析し、矯正治療を含めた総合的な治療計画を立案。
舌側矯正(裏側矯正)を用いて、歯並びと噛み合わせの調和を図る方針となりました。
患者様は19歳の段階で、「虫歯が痛む」との主訴で来院されました。中学生の頃から虫歯が多発しており、初診時には既に神経を失った歯(失活歯)が複数認められました。また、未処置の虫歯も多数みられ、若い年齢にもかかわらずカリエスリスクが高い状態でした。
口腔内を確認すると、前歯がしっかり噛み合っておらず、その結果、臼歯(奥歯)に大きな負担が集中していました。奥歯が壊れやすく、虫歯が深くまで進行しやすい咬合(噛み合わせ)の特徴があり、虫歯の再発をくり返してしまう背景として重要な要因となっていました。
患者様は当時学生であったため、親御様にも同席いただき、現在の口腔内の状態を丁寧に説明しました。
虫歯の治療だけをその都度行う方法では、再発をくり返し、将来的に歯を失う可能性が高いことを共有しました。
そこで、虫歯の原因となっている咬合の問題を根本から改善するため、矯正治療を含めた総合的な治療の必要性をご理解いただきました。精密検査(Steiner分析・SETUP模型)を行い、治療方針の立案へと進みました。
精密検査として、Steiner分析(頭部X線規格写真を用いて骨格や歯の傾き・位置を評価する方法)とSETUP模型分析(理想的な歯並びを模型上で再現する分析)を行い、治療後の目標を具体的な数値として設定しました。
分析の結果、上下の前歯が前方へ突出し、前歯が噛み合わないことで臼歯へ過度の負担が集中している状態が確認されました。そこで、
・上の前歯:3mm舌側へ移動
・下の前歯:3mm舌側へ移動
・上の奥歯(臼歯):左右とも2.5mm前方(近心)へ移動
・下の奥歯:右側3.5mm、左側4.5mm前方へ移動
という歯列全体の再配置を計画しました。
前歯同士のかみ合わせの最終設定としては、
・オーバージェット:2.5mm
・オーバーバイト:2.5mm
を目標とし、**アンテリアガイダンス(前歯がしっかり噛める状態)**を確立することで、奥歯だけに負担が集中しない噛み合わせを目指しました。

前歯の位置を後方へ移動させるためにはスペースの確保が必要であり、抜歯が最適と判断しました。
一般的には「前から4番目の歯(第一小臼歯)」を抜歯することが多いですが、本症例では以下の理由から、上下左右の前から5番目の歯(第二小臼歯)4本を抜歯部位として選択しました。
・4番(前から4番目の歯)は全て生活歯(神経が残っている歯)で、長期予後が良い
・5番(前から5番目の歯)には失活歯が含まれ、破折や再治療のリスクが高い
・長期的に歯を守るという観点から、抜歯部位を慎重に選択する必要があった
通常、このような分析結果の症例での5番抜歯はスペースの調整が難しく、治療期間が延びやすい傾向があります。しかし、アンカースクリュー(歯を動かす固定源として用いる小さな医療用ネジ)を活用することで、効率良く歯を移動させる計画としました。
本症例では、目立ちにくく、かつ歯の動きの精密なコントロールに適した舌側矯正を採用しました。
舌側矯正は、
・歯の裏側という限られたスペースに装置を設置する必要がある
・舌の動きや形態の個人差を考慮しながら装置を設計する
・表側矯正に比べワイヤー調整の自由度が低く、歯の細かい動きを再現しにくい
などの特性から、高い専門性と豊富な経験が求められる治療方法です。
当院では、国内外で研鑽を積んだ矯正専門ドクターが担当し、舌側矯正の症例数も多いため、複雑な歯の移動が必要となるケースでも適切な治療計画を立案することができます。
こうした分析と診断をもとに、虫歯をくり返さない口腔環境を目指した総合的な矯正治療を進める方針が決定しました。
治療は、虫歯や失活歯の状態を整えたうえで矯正治療に進む「総合治療」の流れで進行しました。まず、矯正治療に耐えられる口腔状態にするため、必要な根管治療(神経の治療)や未処置の虫歯治療、不適合な補綴物の除去を行い、健康な土台を整えました。
十分な治療土台が整った段階で、舌側矯正(裏側矯正)の装置を装着しました。
歯の裏側に装置を設置する舌側矯正は、表側矯正と比べて調整スペースが限られているため、ワイヤーの選択や曲げ方に細かな技術が求められます。本症例では、設定したゴール(前歯の舌側移動と臼歯の前方移動)に合わせて、段階的にワイヤーを調整し、歯列全体の位置関係を整えていきました。
上下左右の前から5番目の歯を抜歯してスペースを確保したうえで、アンカースクリューを使用しながら歯を効率的に移動させました。
アンカースクリューは、歯を確実に動かすための固定源(支点)となるため、
・前歯の3mm舌側移動
・上顎臼歯の2.5mm前方移動
・下顎臼歯の3.5〜4.5mm前方移動
といった、緻密な移動計画をスムーズに進める助けになりました。
歯列全体の移動が進むにつれ、前歯同士の噛み合わせが整い始めました。
アンテリアガイダンス(前歯がしっかり噛める状態)が確立されることで、奥歯だけに負担が集中する状態が改善し、治療開始時にみられた奥歯の破損リスクを低減できる噛み合わせが形成されました。
矯正治療で位置が整った歯に対して、治療後は虫歯の再発を防ぐため、保険治療で装着されていた金属での被せ物を、
・セラミックインレー
・ジルコニアクラウン
に順次置き換える計画を立てました。これにより、適合性の向上と清掃性の改善が期待でき、長期的なカリエスリスクの低減につながるよう配慮しました。
治療は約2年の期間をかけて進行し、歯並び・噛み合わせともに安定した状態へと整っていきました。
本症例では、虫歯の再発をくり返しやすかった咬合の問題を、舌側矯正によって根本から整えることを目指しました。治療後には、歯並びだけではなく、咬合機能のバランスが改善し、初診時とは大きく異なる安定した状態となりました。
治療前は前歯が噛み合わず、その結果として奥歯に強い負担が集中していました。矯正治療後は、
・前歯が適切に噛み合うアンテリアガイダンスが確立
・奥歯の過度な負担が軽減
・上下歯列の前後的・垂直的な関係が整い、噛み合わせ全体がバランスの良い状態へ
と、機能面での大きな改善が認められました。
上下前歯は3mm舌側へ移動し、上下顎前突の解消につながりました。また、左右の臼歯を計画的に前方へ移動したことで、歯列全体のアーチ形態が整い、横顔の印象にも自然な調和が生まれました。
過度に突出していた前歯の位置が理想的な位置関係に収まり、前歯同士が適切にかみ合うことで、見た目・機能の双方で安定性が向上しました。
治療前には未処置歯や失活歯が多数みられましたが、矯正治療に合わせて虫歯治療・根管治療を行い、治療後は補綴物のやり替えによって清掃性・適合性の向上が期待できる状態まで整えています。
その結果、将来的な虫歯の再発リスクを低減できる環境が構築されました。
治療終了後、患者様の口腔内は、機能面・清掃性・審美性のいずれもバランスの取れた状態へと整いました。
治療前は前歯が噛み合わず、奥歯に大きな負担がかかっていましたが、矯正治療後は前歯でしっかり噛めるようになり、食事のしやすさや噛み心地の変化を実感されていました。また、奥歯への過度な負担が軽減されたことで、将来的な歯の破折リスク低減にもつながる噛み合わせが確立されました。
矯正治療と並行して虫歯治療や根管治療を行い、治療後は補綴物のやり替えを実施したことで、清掃しやすく、虫歯が再発しにくい環境が整いました。
若い年齢の段階で、長期的な歯の保存を見据えた治療ができた点は、患者様にとって大きなメリットとなりました。
「就職活動の時期にはきれいな歯並びを手に入れることができたので、自信を持って面接に臨めました。」
患者様が学生のうちから治療に取り組まれたことで、口腔環境を良好に整えた状態で社会人生活を迎えられたことを、大変喜んでおられました。
・舌側矯正:900,000円
・セラミックインレー:55,000円/本
・ジルコニアクラウン:80,000円/本
※治療内容により異なる場合があります
本症例のように、虫歯リスクが高く、咬合の問題と補綴治療を総合的に見極める必要があるケースでは、矯正単独ではなく「一般歯科と矯正歯科の一貫した診療体制」が大きな役割を果たします。当院では、以下の特徴を活かし、患者様の長期的な歯の健康を見据えた治療計画を立案しています。
当院では、国内外で研鑽を積んだ矯正専門ドクターが治療を担当しています。2013〜2025年の12年間で2,500症例以上の矯正治療に携わり、舌側矯正(裏側矯正)やマウスピース矯正など、見た目に配慮した矯正治療にも豊富な経験があります。
特に舌側矯正は、歯の裏側という限られたスペースで精密に歯をコントロールする高度な技術が必要で、本症例のように複雑な動きを伴う計画にも柔軟に対応できました。
虫歯治療、根管治療、補綴治療を矯正治療と並行して行える環境が整っているため、
・矯正前に必要な治療を適切な順序で行える
・補綴物のやり替えも矯正計画と連携できる
・治療途中でも総合的な視点で判断できる
といったメリットがあります。
本症例では、失活歯の扱い、根管治療のタイミング、不良補綴物の除去などを矯正計画と連動させることで、長期的な歯の保存を見据えた治療が可能になりました。
当院の矯正治療は審美性の改善だけでなく、
・噛み合わせの安定
・奥歯への負担軽減
・長期的に歯を守る口腔環境の構築
を重視しています。
本症例でも、アンテリアガイダンスの確立や臼歯負担の改善など、長期的な機能の安定を踏まえた治療を行いました。
矯正治療は費用面の不安が大きい患者様も多いため、当院では治療開始前に総額を提示する**トータルフィー制(定額制)**を採用しています。また、初回の矯正相談は無料で行い、治療内容・費用・期間について丁寧にご説明しています。
執筆・監修者

院長:平野 琢起
まずはしっかりとお話を聴き、治療は相談してから
来院されてすぐに治療を始めるのではなく、まずは不具合の出ているところの症状などをしっかりとお伺いする時間を設けております。
治療にはどのような選択肢があり、どのようなリスクやメリットがあるのか。
それぞれの治療のリスクやメリットについてご説明させていただき、どのような治療を行うかを患者さんと相談したうえで決めていきます。
国内・国外で研鑽を積んだドクターが対応
当院は国内・国外で最新の治療を学び、地元箕面にてその技術を提供しています。
当院では、経験豊富な専門ドクターが一人ひとりに合わせた丁寧なカウンセリングを行い、最新の技術で最善の治療を提供いたします。
