こちらの方は重度歯周病のため、奥歯がグラグラと揺れ、上の前歯は前方に飛び出していました。歯周ポケットという歯と歯茎の間の溝が、健康な人で3㎜程度なのに対し、こちらの方は8㎜以上のポケットが上の前歯と左下の奥歯を中心に散在している状態でした。まずは、初期治療として歯周病の治療から開始し、残っている天然歯を守る治療をさせて頂きました。さらに、むし歯治療、歯の神経の治療、被せの治療を行い、保存困難と診断した歯は患者様と相談の上、抜歯となりました。理想的な嚙み合わせに向けて、矯正治療とインプラントを併用し、咬合機能の回復に向け、上記のような治療計画を立てました。
古い被せ物を外し、仮歯を入れて、根っこの治療、歯周病の治療を行いました。下の前歯は矯正装置を装着し、歯並びを整えました。
〜少し専門的な話〜
今回の治療計画は矯正学的診断に基づいて、以下のように決定しました。
①抜歯後の骨吸収を想定し、上顎前歯のインプラント埋入位置を決定【上顎は5mm後方へ】
②下顎前歯部のポジションの決定【下顎は2㎜後方へ】
③下顎の抜歯部位の決定
【左下2番の抜歯】
この計画によって矯正の治療期間を大幅に短縮し、理想的なカップリングの構築が可能となりました。
矯正治療後の歯の位置をデジタルで再現し、CT画像と重ねて術前シュミレ―ションを行い、最終的なインプラントの埋入位置を決定しました。
歯周病で吸収した上顎前歯の骨に対して、インプラント埋入時に骨を増やす手術(GBR)を行いました。さらに瘦せた歯茎の厚みとボリュームを増やす手術(CTG)も行いました。
骨と歯茎のボリュームを増やしたインプラント埋入部位に対して、仮の歯を入れました。
本症例では、矯正治療とインプラント治療によって、残った歯が長持ちする正しい噛み合わせを付与できました。まず初めに、しっかりと歯周病の治療を行ったことで、8㎜以上の歯周ポケットが全て3㎜以下になりグラグラだった歯がしっかりと噛めるようになり、インプラントの必要本数を最小限に抑えることができました。また、矯正学的診断から理想的な上下の前歯の位置を決定し、抜歯する歯を工夫することで、矯正の治療期間を短縮できました。また、歯周病で崩れていた歯並びですが、最終的な被せものが入る時には理想的な嚙み合わせと美しい歯並びに仕上がり、患者様にも大変喜んで頂きました。こちらの患者様は、治療が終了してから3年が経過し、現在の予後も安定しており、定期的なメインテナンスに来て頂いております。