こちらの患者様は、他院にて歯の神経の治療(根管治療)を行った左上第ニ大臼歯(左上7番)の根管が細菌感染を起こしていました。さらに、歯の感染が上顎の中の空洞(上顎洞)にまで拡大し、蓄膿症(上顎洞炎)を併発しており、激痛を訴えられていました。上顎の大臼歯は根尖部が上顎洞内に突き出ているケースが多く、上顎洞炎という蓄膿症の原因歯となる事があります。こうした歯性上顎洞炎は自然治癒せず、原因歯の抜歯もしくは根管治療が必要となります。
この症例は左上7番由来の歯性上顎洞炎と診断し、根管治療を行っていく事にしました。また、左上7番は歯根の中央辺りで大きく遠心方向に湾曲しており、極めて難しい治療となることが予想されました。
まずは、歯の中に残っている古い土台(スクリューポストとレジンコア)、根管内の充填物(ガッターパーチャポイント)を除去し、湾曲に追従するように穿通(根の先端まで器具を到達させること)を試みました。また、CT撮影を行い、上顎洞の炎症と根管の形態を確認しました。最終的には、4つの根管を全てを穿通し、ニッケルチタンファイルを用いた機械的拡大と、次亜塩素酸を用いた化学的洗浄を行いました。治療開始後から、炎症症状は少しずつ消失し、症状が完全に消失してからガッタパーチャポイントを用いて根管充填(根管内を封鎖すること)を行いました。レントゲン写真が示すように、湾曲している根管の先端まで白く見えるガッタパーチャポイントが充填されています。
左上6番の根管充填後にセラミックの被せ物を装着しました。根管治療開始から約6ヶ月後、上顎洞をCTで撮影したところ、CT上で白くなっていた上顎洞が黒くなり、上顎洞炎の治癒が確認できました。根管治療開始から4年近くが経過しましたが、その後の経過は良好です。この症例では上顎洞炎の原因歯が湾曲根管を伴っており、抜歯と判断されてもおかしくないケースでしたが、当院で根管治療を行った結果、何とか保存することができ、患者様にも大変喜んで頂きました。一方、左上7番は神経の無い失活歯であり、歯が割れる(破折)リスクは高いため、メインテナンスにて見守っていく必要があります。
当院ではこうした根管治療の難症例にも対応しております。歯の神経の治療でお困りの方は、当院に是非ご相談下さい。