メリット
・封鎖性が高い
・優れた殺菌効果
・生体親和性がある
・歯の形成を促す
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歯髄とは、一般的に「歯の神経」と呼ばれている軟らかい組織のことです。歯の根っこの先で、顎の骨の中の神経や血管と繋がっています。
この歯髄には、様々な刺激を脳へ伝える神経と、無数の毛細血管が存在します。この毛細血管は、歯に血液や栄養を送る大切な役割を担っています。
むし歯や外傷で歯が折れ、細菌が侵入すると、歯が痛んだり、歯肉が腫れたりすることがあります。
さらに、歯髄が残っていることは歯の丈夫さにも関係しています。治療によって歯髄が取り除かれると、歯への栄養や酸素の供給源が断たれ、艶を失い黒っぽく変色することがあります。また、歯の強度も低下します。これは、生きている木がしなやかで折れにくいのに対し、枯れ木が折れやすくなるのと同じイメージです。歯髄がなくなると、歯は折れやすくなります。
歯髄をできるだけ残すことは、歯の長期的な健康にとってとても重要です。しかし、日本では大きな虫歯があると、歯髄を簡単に取り除く治療が選ばれがちです。
しかし、歯に大きなむし歯ができて歯髄に達してしまった、怪我をして歯が折れてしまい歯髄が露出してしまった場合など、歯髄を除去しなければならない状況もあります。
そういった場面で歯髄を除去せず、残して保存する治療を「歯髄保存治療(VPT)」といいます。
①歯が脆くなる
②虫歯ができても気づきにくい(痛みがないまま進行するため)
③歯が変色する
④根っこの部分で再感染が起こり痛みが出る
かつてはむし歯が歯髄に達すると、感染が歯髄全体に広がっていると考えられ、歯髄組織を全て取り除く必要があるとされていました。これは抜髄と呼ばれる根管治療の一種です。
しかし、最近では感染している部分の歯髄だけを除去し、健康な歯髄は残せるという考え方が一般的になっています。これを歯髄保存療法(バイタルパルプセラピー=VPT)と言います。
最近の材料技術の進歩により、”MTA”という特別なセメントを使用することで、歯髄保存療法(VPT)が実現可能となりました。
・封鎖性が高い
・優れた殺菌効果
・生体親和性がある
・歯の形成を促す
・全てのケースに適応できるわけではない
・保険適用外の薬剤である
・歯の生活反応がない場合は歯の神経を取る必要がある
一般的な歯のセメントは固まると縮むため隙間ができやすく、細菌の侵入リスクがあります。しかし、MTAセメントは固まると膨らむ性質があり、隙間をしっかり埋めて細菌の繁殖を抑えます。
MTAセメントは強アルカリ性の材料です。そのため、大部分の細菌を死滅させる能力があります。(大部分の細菌はpH9.5で死滅しますが、MTAセメントはpH12の強アルカリ性です。)
周囲の菌を死滅させ、セメント周りの細菌の増殖を抑えることができます。
これにより、むし歯菌に感染した歯髄も保存できる可能性が高まり、歯の寿命が延びます。
MTAセメントは細菌をのせて培養できるほど体に親和性が高く、使用しても体にほとんど影響がありません。そのため、歯の穴を埋める際に安心して使えます。
MTAセメントは少しずつ水酸化カルシウムを放出し、組織を刺激して歯の再生を促します。個人差はありますが、これにより失った組織の再生が期待でき、歯が長持ちする可能性が高まります。
患者様の症状やレントゲン、電気歯髄診などを用いて歯髄の状態を正確に判断します。これが成功率を左右する重要なポイントです。
治療を始める前に、治療内容について患者様に説明し、納得と同意を得ることが重要だと考えています。
当院には、認定を持ったTC(治療のコーディネーター)が在籍しています。TCより治療のメリットもデメリットをきちんとお伝えし、患者様ご自身が理解した上で治療に臨んでいただきます。
マイクロスコープを使って小さな歯髄の露出や異変を見逃さずに治療を行います。視野が明確であることは治療成功の鍵です。
歯髄保存が成功した場合でも、修復物の精度が重要です。精度が悪ければ、細菌が再侵入して再び問題が生じる可能性があります。
療後に問題がないように見えても、時間が経つと歯髄が弱り死んでしまうことがあります。定期的なレントゲンなどでチェックします。
・露髄時または歯髄切断時に出血が止まらない場合や壊死していると判断される場合は、歯髄の保存不可とみなし神経を除去する処置(根管治療)に変更となります。
・治療後は約1ヶ月ほど経過を見てから詰め物の治療に移ります。
費用:49,500円
※歯髄保存療法を行った歯の治療は、被せ物も保険外治療となります。