箕面市の歯医者 平野歯科クリニック
院長 平野 琢起
医療法人平野歯科クリニック院長の平野です。
皆さんは食べ物を飲み込むとき、舌や顎がどの様になっているかご存知でしょうか?
物を飲み込むことを嚥下(えんげ)と言います。この嚥下について正しい方法と間違っている場合に起こりうる悪影響についてお話します。
乳児の場合、嚥下方法は哺乳に適したものになっています。このため、口の中の構造や嚥下のプロセスは大人とはまったく違います。乳児には、「哺乳反射」という、口に物が入ると反射的に吸い込むようになっています。そのため、舌を前後に動かして飲み込むのが、乳児特有の方法です。
5〜6ヶ月頃になると、この哺乳反射は次第に失われ、乳児の嚥下方法と大人のものが混ざったものになります。そして、一歳から一歳半の間に、大人と同じ嚥下方法へと遷移します。
成長に伴い、口の中や嚥下の方法は変化し、乳児特有の嚥下方法はしなくなります。これにより、反射的な嚥下から意識的な嚥下へと移行します。
成人の場合、唇を閉じて咀嚼し、舌の動きをうまく利用しながら、上下の歯を合わせて飲み込むことが一般的です。
大人になると、これが正しい嚥下方法となりますが、飲み込む際に舌を歯と歯の間に突き出したり、口元に余分な力がかかるなど、乳児時代の嚥下の特徴が残ることで、間違った嚥下をすることがあります。
こうした間違った嚥下は、嚥下する度に舌で前歯を押してしまい、それが原因で出っ歯、受け口、開咬などの不正咬合を引き起こす可能性があります。
また、せっかく矯正をして歯並びをキレイにしたとしても、間違った嚥下によって、後戻りや別の問題を引き起こすことがあります。
では「正しい嚥下」について、5つのポイントをご紹介します。
①舌の先端が上あごのスポットに触れている
②唇は軽く閉じられ、リラックスしている
③奥歯は噛んでいる状態
④舌の先端から中央、後部にかけて徐々に上顎の裏(口蓋)に吸着する
⑤舌の後方が軟口蓋(喉の奥)に触れている
④および⑤は意識しにくいかもしれませんが、①から③はすぐに確認できると思います。食事中に口元が汚れやすい方は、鼻呼吸が困難で口が開きがちであるか、物を飲み込む際に舌が前に出てしまうことが原因のため、注意が必要です。
逆に、飲み込む際に唇や周囲の筋肉がこわばっている人は、食べ物が飛び出さないように舌の力でコントロールしている可能性があります。奥歯を噛みしめずに飲み込んでいる人は、大抵の場合、舌が上下の歯の間に入り込んでいることが原因です。これらの習慣は、前述した通り、出っ歯や受け口、開咬などの不正咬合を引き起こす要因となります。
①から⑤のポイントを全て満たして物を飲み込むのが「正しい嚥下」とされますが、成人であっても全ての人がこれをできるわけではありません。口呼吸する人の中には、アレルギー性鼻炎や扁桃腺肥大など、鼻や喉の疾患が原因で、鼻呼吸が困難になり、耳鼻科での治療が先に必要となるケースがあります。さらに、舌小帯(舌の根元に存在する筋)が短い、いわゆる舌小帯短縮症の人は、これが原因で舌が上顎まで届かないため、切除が必要となることもあります。舌が適切に動かせないと、発話にも影響が現れます。
日常生活において、食事や飲み物を飲む以外でも、私達は無意識のうちに何度も唾液を飲み込んでいます。
間違った嚥下の癖があると、歯に何度も不適切な力を与えることになり、歯並びに影響を及ぼします。
元々の骨格や歯並びの問題で、間違った嚥下の癖がついてしまうこともあるのですが、単なる習慣や癖である場合は、個人の努力で改善することができます。
物が噛みにくい、飲み込みにくいと感じる方は、一度歯医者に相談することをお勧めします。
箕面市の歯医者 平野歯科クリニック
院長 平野 琢起